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同じ5Sでなぜ成果が分かれる?発展する企業と改善止まりの企業の違い

発展する企業と改善止まりの企業の違い

あなたの会社では、5S活動によって「現場が整った」という実感があるかもしれません。それ自体はとても良いことです。

でも、本当に5Sを使いこなせていると言えるでしょうか?

今回は、「5Sで事業が発展する会社」と「現場改善で止まってしまう会社」の違いについて、現場での実体験をもとにお話しします。

 

どちらの会社も、整理・整頓・清掃を徹底していて、一見すると現場はどちらも整っている。
作業効率も上がっているし、社員同士の意見も出るようになってきた。
風通しも悪くない。

しかし、あるところから差がついていきます。

 

ある会社では、そうした日々の改善活動を“土台”として、
「会社として次に何ができるか」
「どうやって売上や組織力を伸ばしていくか」
といった経営視点の議論に発展していきます。

一方で、もう一つの会社では、「現場が整った」ことに満足してしまい、経営者自身が「うちはこれでいい」と感じている。

社員は前向きに動いていても、
会社全体としては“現状維持”の枠から抜け出せない。

 

同じ5Sに取り組んでいても、その後の会社の伸び方には明確な違いが出てきます。

その差はどこにあるのか?

本記事ではこの違いを、さらに深く掘り下げていきます。

発展する会社 vs 現状維持で止まる会社

5Sの先に進む会社、止まる会社

5S活動を通じて現場が整い、社員から改善のアイデアが出てくる。

この段階までは、多くの企業に共通する「成果」です。

 

日々の気づきや工夫の積み重ねによって、現場の空気が変わり、チームのコミュニケーションも活発になっていく。

社員の主体性も、少しずつ育っていく。

 

それ自体は、5Sがもたらす非常に価値ある変化です。

しかし問題は、その“先”にあるのです。

 

「5Sを土台にする」経営者の視点

5S活動をサポートさせていただいた、北陸にある製造業の経営者の方は、こう語っていました。

「会社を次のステージへ進めるには、トップダウンだけでは限界がある。社員が主体的に動ける組織づくりが必要だ」

この方は5S活動を、単なる現場改善ではなく、社員の主体性を育てる訓練の場と捉えていました。

 

さらに、自分自身の「経営スタイル」を磨く機会でもあると考えていたのです。

社員が自ら気づき、考え、動くようになったら、次は会社の未来についても一緒に考えられる組織にしたい。

5Sを“経営の土台”として活かす──
そうした高い視点が、会社の展開力を育てていきます。

 

止まってしまう会社に共通する「前提」

一方で、関西のある製造業の会社も、「社員が主体的に動く会社にしたい」と考えて5Sを導入していました。

しかしその会社には、ある“前提”がありました。

それは──
「会社の方向性を決めるのは経営者一人の役割」という考えです。

実際、SWOT分析も、社員の視点を取り入れればもっと多角的な議論ができたはずなのに、社長ひとりで進めていたのです。

 

5Sによって現場は整い、社内の風通しも改善されている。

けれども経営者が「うちはうまくいっている」と満足してしまった時点で、会社全体の成長は止まってしまったのです。

 

現場で改善が進んでも、経営としての“次の一手”が出てこない。

この違いは、現場の力不足ではありません。問われているのは、経営者の視点の高さです。

 

5Sを「整える」ためにやるのか、それとも「発展の土台」として活かすのか──

その捉え方ひとつで、会社の未来は大きく変わります。

 

本当に今の5Sに意味があるのか?

見た目は整っている。でも発展していない──

5S活動を長年継続し、現場も整い、ルールも定着し、社員の主体性も少しずつ育ってきた。

外から見れば、「模範的な5S企業」と言われるような状態かもしれません。

 

でも、それで本当に、会社は発展していると言えるのでしょうか?

ある製造業の経営者の方が、こんな話をしてくださいました。

「取引先の会社は、5Sが徹底されていて素晴らしい。でも、何年も規模が変わらず、ずっと小さなままなんです。正直、あの5Sに意味はあるのかと思ってしまうんですよ」

この言葉は、とても本質的な問いを投げかけています。

整っている=伸びている、ではない

たしかに、現場はきれいに保たれている。
ムダも減り、ミスも減り、社員も真面目にルールを守っている。

でも、その先があるかどうかが重要です。

社員が現場で改善を続けていたとしても、経営者自身が「今のままで良い」と満足してしまったら、そこから会社の発展は止まってしまいます。

5Sで得た成果に安心して、「売上」「事業展開」「組織の進化」といった視点が
抜け落ちてはいないでしょうか?

現場だけが整っていても、会社全体としての前進がなければ、いずれ環境の変化に取り残されていきます。

5Sの「目的」を問い直すとき

5S活動に真剣に取り組まれている企業の皆様にこそ、
あえてお伝えしたい問いがあります。

「その5S、何のためにやっていますか?」

整えること自体が目的になっていないか?
チェックリストを埋めることがゴールになっていないか?

本来の目的は、会社を強くすること。

5Sはゴールではなく、
会社を次のステージへ進める“はじまり”です。

整った先に、どんな未来を描くのか。
そこを描かなければ、組織は止まります。

 

5Sを「会社を育てる土壌」に変えるには?

5Sは「整える活動」では終わらない

5Sは、単に現場をきれいにする活動ではありません。

本来は、「気づく力」や「考える力」を育てる土壌になるべきものです。

たとえば…

  • 段取りのムダに気づく
  • 動線の非効率に気づく
  • 設備の不調や安全リスクに気づく

こうした“違和感”に気づき、
それを仲間と共有して、改善につなげていく。

この積み重ねこそが、
主体性や当事者意識を育てる訓練になるのです。

一方で、こうした本質を見落とし、
「仕組みだけ整えればOK」と考えてしまう会社もあります。

けれど、考える力が育たない組織は、必ずどこかで行き詰まります。

 

育った組織力を、現場の中だけに閉じ込めない

社員が気づき、考え、改善できる力を持ち始めた。
そんな組織が育ち始めたら、その力を現場の中だけに留めておくのは、もったいない。

現状維持は、後退です。

5Sによって土台が整った今だからこそ、その視点を「経営」や「事業展開」へと広げるべきタイミングです。

整ったことに満足するのではなく、
「整った今、次に何に挑戦するのか?」

そこを問い直すことができるかどうか。
それが、次のステージに進める会社と、止まってしまう会社の分岐点になります。

 

「5Sしかない会社」には、人は残らない

時代は変わりました。
今はもう、終身雇用でもなければ、「我慢して働く時代」でもありません。

社員は会社を選ぶ時代です。

 

ただ決められたことをこなすだけの職場では、やりがいや成長を感じることはできません。

優秀な人材ほど、外に出ていきます。

 

実際、ある5Sで有名な企業を辞めた社員がこう話していました。

「ここは5Sだけの会社。
その先に何があるのか見えなかった」

いくら5Sが徹底されていても、その先に「挑戦」や「成長」がなければ、組織は育たないのです。

一方で、「自分の意見が反映される」「会社の未来に関われている」と社員が実感できれば、人は自然と力を発揮します。

そこに、定着と成長が生まれるのです。

 

5Sは、社員を育て、組織を育て、そして会社の未来を育てるための“土壌”です。

その基盤を回しながら、
経営としては未来に挑む。

そうした両利きの経営こそが、これからの時代に求められる姿だと、私たちは考えています。

その5S、どこへつなげますか?

5Sは、スタートラインにすぎない

ここまでお伝えしてきたように、5S活動を通じて現場は整い、社員の主体性も少しずつ育っていきます。

でも、そこで止まってしまうのは本当にもったいない。

 

せっかく育った組織を、どこへつなげていくか。

その舵取りを担えるのは、経営者だけです。

 

5Sは目的ではありません。

あくまで「手段」です。

 

整った今だからこそ、どこに向かうのかを明確にする必要があります。

そしてその問いに答えられるのは、現場の社員ではなく、経営者自身です。

 

整っただけで止まるか、整った先へ進むか

組織が整ったとき、そこがゴールではなく、次のステージへの「スタートライン」です。

整って満足してしまえば、そこから先に進むことはできません。

現場が変わった。
風土が良くなった。
社員も育ってきた。

…だからもう十分?

いいえ。
そこから何に挑むかが、問われているのです。

 

現状維持は、後退です。

変化のスピードが速い今の時代において、止まることは、衰退を意味します。

いま一度、立ち止まって、問い直してみてはいかがでしょうか?

 

会社を動かす“次の一歩”に向けて

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  • この記事を書いた人

上石 政代(Smile System Support 代表)

5S活動の社内定着を支援するコンサルタント・講師。
これまでに医療・介護・製造業などの現場でのべ1000名以上に研修・講演を実施し、5Sを“現場文化として根づかせる”実践支援を行っている。
現在までに、5Sによる組織風土改善支援に携わった企業は100社を超える。
Smile System Support代表・上石政代について

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