職場に「どうしても整理整頓ができない人」がいて困っていませんか。デスクの上が常に散らかっている、ロッカーに物が溜まっていく──そんな状況を見て「なぜ片づけられないのか」と疑問や不満を感じる人は少なくありません。
実は、整理整頓が苦手なのは怠けや性格のせいではなく、誰にでもある「不得意分野のひとつ」にすぎません。そして本人を責めても根本的な解決にはつながりません。大切なのは、誰でも自然にできる仕組みを整えることです。
本記事では、「整理整頓ができない人」が生まれる背景と、その解決策として有効な5S活動(整理・整頓・清掃・清潔・躾)の考え方をご紹介します。表面的な片づけにとどまらず、仕組みと風土を整えることで、職場全体が変わっていくステップを解説していきます。
なぜ職場には整理整頓できない人がいるのか
整理整頓が苦手な人の特徴と原因
職場には、必ず「整理整頓が得意な人」と「苦手な人」が存在します。これは性格の問題だけでなく、人の脳の仕組みや得意・不得意の違いに起因します。例えば、数字やルールに強い人がいる一方で、直感的に動くのが得意な人もいるように、整理や整頓がどうしても苦手という人もいます。
つまり「整理整頓ができない人=怠けている人」ではなく、不得意分野の表れにすぎないのです。
責めても解決しない理由
ただし、この「できない人」を放置してしまうと、職場全体の秩序や効率が崩れ、チーム全体に悪影響を与えます。かといって、本人に「努力して片づけろ」と叱責しても、根本的な解決にはつながりません。むしろ継続性がなく、職場の雰囲気を悪化させてしまう恐れがあります。
人を変えるより、仕組みで「できる」をつくる
ではどうすればよいのか。答えは「誰でも自然にできる仕組みを整えること」です。例えば、物の置き場所を写真やラベルで示す、引き出しをワンアクションで開け閉めできるようにするなど、仕組みと工夫で“できる環境”をつくるのです。これこそが、後に紹介する5S活動の核心につながっていきます。
人を変えるより「できる仕組み」を設計する
整理整頓ができない人を減らす最も効果的な方法は、仕組みそのものを改善することです。ここで役立つのが、トヨタ生産方式から広がった「5S活動」です。
5Sは「整理・整頓・清掃・清潔・躾」の頭文字をとった職場改善の手法であり、単なる片づけではなく「誰でもできる環境を設計する」考え方そのものです。
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仕組みで行動が変わる
トヨタには、「人を責めるな、仕組みを責めろ」という言葉があります。職場でルールが徹底されない、整理整頓が続かないのは、個人の意識や性格が原因ではなく、誰でも守れる仕組みになっていないことが原因です。
例えば、
- 置き場を明確に決める(定位置)
- 必要な数を決める(適正量)
- 誰でも分かるように表示する(標示)
といった工夫を加えるだけで、整理整頓の行動は「努力」ではなく「自然な流れ」に変わります。これはまさに5S活動の「整頓」の基本であり、定着する仕組みを作る第一歩です。
また、仕組みをつくる際に重要なのは、現場の声を取り入れて全員で合意することです。上から押し付けられたルールは続きません。現場で「これならできる」と納得して決めたルールこそが、習慣となり文化へと変わっていきます。
整理整頓できない人を無理に変えようとするのではなく、誰でも自然にできる仕組みを設計すること。ここからが、本当の意味での解決策となり、職場の風土を変える第一歩につながります。
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個人スペースにどうアプローチするか
整理整頓の課題は、共有スペースだけではありません。実際には個人のデスクやロッカーといったパーソナルな領域が散らかってしまい、周囲の人が「片づけてほしい」と感じながらも介入しにくいケースが多くあります。
ここで重要なのは、直接「片づけなさい」と指示するのではなく、仕組みと合意で解決を図ることです。
守りやすい最小ルールをつくる
「デスク上はA4用紙3枚分まで」「ロッカーに置く私物はボックス1つまで」といった具体的で測れる基準をチームで話し合い、合意することが効果的です。ルールはシンプルであるほど守りやすく、習慣になりやすいのが特徴です。
セルフチェックの仕組みを導入する
外部が介入しにくいからこそ、本人が自分で確認できる仕組みを設けると定着しやすくなります。週に一度デスクの写真を撮って振り返る、退勤前に3分だけ整える時間をチーム全体で共有する――こうした仕組みが行動を後押しします。
合意形成が風土をつくる
個人スペースの整理整頓は、本人のやる気や性格だけに任せていては続きません。現場全員で「これならできる」という合意をつくることが、風土を変える第一歩になります。ルールを押し付けるのではなく、全員で話し合いながら決めるプロセスそのものが、組織に「自分たちで決めたことを守る」文化を根づかせていきます。
5S活動がもたらす具体的な効果
「整理整頓ができない人」をどうにかしたい――その悩みを根本から解決するのが5S活動(整理・整頓・清掃・清潔・躾)です。5Sは単なる片づけや美化運動ではなく、誰でも自然に行動できる仕組みをつくり、職場全体の風土を変えていく活動です。
誰でも片づけられる仕組みをつくる
5Sの整頓では「定位置・定量・標示」を基本とします。これにより、物の置き場所や必要量が明確になり、苦手な人でも迷わず整理整頓ができます。結果として「できない人を責める必要がなくなる」職場になります。
無駄や探し物が減り、効率が上がる
共有スペースでも個人スペースでも、「探す・迷う・やり直す」といった無駄が減ります。小さな時間のロスが積み重なることで仕事の効率は大きく変わり、余裕が生まれることで人間関係のストレスも減少します。
安全・品質・モチベーションにつながる
整理整頓は事故防止や品質安定にも直結します。さらに、整った環境は社員のモチベーションや働きやすさを高め、定着率向上にもつながります。これは単に「片づけ上手になる」以上の効果です。
まとめ:個人の問題を仕組みで解決する
「整理整頓ができない人」を変えることは難しいかもしれません。けれど、5S活動によって仕組みを整えることで、誰でも自然にできる環境をつくることは可能です。それは個人を救うだけでなく、職場全体の効率や雰囲気、ひいては企業文化を変える力につながります。
まとめ
整理整頓ができない人は、怠けているのではなく「不得意」という特性を持っているだけです。叱責や我慢では解決せず、放置すれば職場全体の効率や雰囲気に悪影響を与えてしまいます。
解決のカギは、人を変えるのではなく、誰でもできるようになる仕組みを整えること。それこそが5S活動の本質です。
「片づけられない人」の問題を根本から解決する仕組みづくりを、まずは体験してみませんか?