5S活動を進めるとき、多くの経営者や管理職が直面するのが 社員の足並みがそろわない という課題です。やる気の差が生まれ、どうしても 「自分ごと」ではなく「人ごと」 になってしまう。結果として、活動が形だけで終わってしまう会社は少なくありません。
では、どうすれば全員のスタートラインを揃え、社員一人ひとりが主体的に動けるようになるのか。
その答えの一つが、活動開始前に行う個人面談です。
一人ひとりが「なぜ5Sをやるのか」「自分にとってどんな意味があるのか」を理解し、不安や疑問を率直に話せる場を持つことで、足並みが揃い、人ごとではなく自分ごととして取り組めるようになります。
5S開始前に個人面談が必要な理由
一斉説明では「やらされ感」が残る
多くの企業は、5S活動を始めるときに「今日から5Sをやります」とトップダウンで宣言し、全社員に一斉説明を行います。ところが、この方法では社員の心に響きません。むしろ「また余計な仕事が増える」「現場の負担が増えるだけだ」と受け止められ、活動が形だけで終わるケースが少なくありません。
5Sは職場環境を変えるだけでなく、社員の意識や行動を変える活動です。だからこそ、一方的な説明ではなく、社員一人ひとりが納得できる対話が不可欠になります。
個人面談が5S活動への不安と抵抗を和らげる
個別に時間を取り、直接対話することで、社員が抱える不安や疑問に応えられます。これは「やらされ感」を薄め、活動を「自分ごと」として捉えてもらうために非常に効果的です。
会社が社員一人ひとりに向き合う姿勢を示すだけでも、心理的な抵抗は大きく下がります。
本音を引き出し、スタートラインを揃える
私たちが企業研修を行う際も、必ず全社員との個人面談から始めます。そこで出てくるのは、会議ではなかなか聞けない社員の本音です。
- 会社や上司への不満
- 現場で困っていること
- 改善してほしい点
こうした声を聞き出し、それを5S活動のテーマや課題に反映させると、社員は「これは自分たちの職場を良くするための活動だ」と実感できます。結果的に、全員のスタートラインを揃えられるのです。
また、「自分の意見を聞いてもらえた」という体験は、それだけで5Sに対する抵抗を和らげ、主体的な参加につながります。
個人面談の3つの目的
目的①:5Sを「自分ごと化」してもらう
5Sは単なる片付け活動ではなく、安全・効率・快適な職場をつくるための全員参加の取り組みです。しかし「会社のため」「上司に言われたから」と受け止められると、どうしてもやらされ感が残ります。
そこで面談では、一人ひとりに 「なぜ必要なのか」「自分にどんなメリットがあるのか」 を丁寧に伝えます。
具体的なメリットを伝えることで、社員は5Sを「自分たちの職場を良くするための活動」として捉えやすくなります。
👉 5S活動の目的とは|安全・効率・快適、そして躾で職場を変える
目的②:不安や抵抗感を解消する
新しい取り組みには不安がつきものです。「余計な仕事になるのでは」「本当に意味があるのか」と感じる社員も少なくありません。
個人面談は、そうした不安に直接向き合える場です。会社が一方的に命令するのではなく、対話を通じて意見を聞き、理解しようとする姿勢を示すことで、心理的な抵抗感は大きく軽減されます。
目的③:現場の課題を吸い上げる
個人面談は、現場が抱える課題や不満を聞き出す絶好の機会でもあります。会議の場では出にくい本音も、個別の場なら率直に語られやすくなります。
- 「作業スペースが狭くて危険」
- 「道具の置き場所がバラバラで探し物ばかり」
- 「部門間の連携が取りにくい」
こうした声を吸い上げ、それを5Sの改善テーマとして反映させれば、社員は「自分の声が活動に生かされている」と感じ、主体的な参加へとつながります。
5S反対派への対応
否定的な社員は必ず存在する(2-6-2の法則)
組織には「前向きに取り組む2割」「どちらでもない6割」「否定的な2割」がいると言われる「2-6-2の法則」があり、新しい取り組みに否定的な人は必ず一定数存在します。
5S活動を推進するうえで重要なのは、まず前向きな2割と中間層の6割を巻き込み、活動の輪を広げることです。全体の8割が動けば、時間とともに反対派も徐々に活動に馴染み、抵抗は自然に薄れていきます。
説得よりも「理解してもらう」ことが大切
反対派に対しては、無理に説得する必要はありません。
個人面談の目的は「賛成させること」ではなく、「5Sの目的」と「自分たちのためになる活動だ」という事実を伝えることです。理解さえしてもらえれば十分で、必ずしも即座に賛同を得る必要はありません。
長期的視点で向き合う
反対派の抵抗をすぐに解消しようとすると、かえって反発を強めてしまいます。
焦らず「理解はしてもらえている」という状態を維持し、数年単位で風土を変えていくことが大切です。
反対派の効果的な対処法
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面談の進め方(実践ポイント)
必ず「個別形式」で実施する
全員を集めて一斉に説明しても、内容をしっかり理解する人とそうでない人が出てしまいます。
5S活動を成功させるには、一人ひとりに個別で向き合うことが不可欠です。個別面談だからこそ、不安や疑問を率直に話してもらえます。
「傾聴・承認・質問」の姿勢を持つ
面談は「評価の場」ではなく「対話の場」です。
- 傾聴:相手の話を最後まで聴く
- 承認:意見を否定せず受け止める
- 質問:掘り下げる問いかけで考えを引き出す
この3つを意識するだけで、社員の本音が引き出されやすくなります。
記録を残し、次につなげる
面談で得られた社員の声は、その場限りにせず記録に残しましょう。
「前回言ったことが次につながっている」と感じてもらえると、社員は「自分の意見が生かされている」と実感します。これが信頼関係の基盤になります。
評価や説得の場にしない
面談を「できている/できていない」を指摘する場にすると、社員は身構えてしまいます。
また、反対派を無理に説得する場にしてしまうと逆効果です。面談はあくまで「話を聞き、理解を深め、活動に生かすための場」として進めることが大切です。
個人面談が難しいと感じたら、代わりにお手伝いします。
5Sを形だけで終わらせないためには、開始前の個人面談が欠かせません。
ただ、実際に全社員と一対一で面談を行うのは、時間も労力もかかり、「自分たちだけでやるのは大変そうだ」と感じる方も多いはずです。
そこで私たちは、個人面談の代行をさせていただいております。外部の立場だからこそ社員が安心して本音を話せることも多く、普段は経営陣に届かない声まで引き出すことができます。その情報を整理してフィードバックすることで、5S活動のスタートラインをしっかり揃えることができるのです。
もし「実施したいけど自社では難しい」と感じられる場合は、下記お問い合わせフォームよりご相談ください。