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5S活動が失敗する原因は経営者にあった|やらされ感をなくす支援者の役割とは

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あなたの会社の5S活動は、本当に成果につながっていますか?
「社員にやらせているけれど定着しない」「片付けや掃除の一環にしか見えない」――そんな悩みを抱える経営者は少なくありません。実は、5S活動が失敗に終わる大きな原因は、社員ではなく経営者自身の関わり方にあります。

5Sは単なる美化運動ではなく、業務効率化・コスト削減・安全性向上を通じて人を育て、組織文化を変える経営改善の仕組みです。この記事では、5S活動を形骸化させる経営者の誤解と落とし穴を整理し、活動を成功に導くために必要な「支援者」としての関わり方を具体的に解説します。

👉 5Sとは?まず知っておきたい意味と目的を解説

なぜ5Sは失敗するのか?経営者が陥りがちな2つの根本的誤解

誤解①:「5Sは単なるお片付け、社員のしつけ活動だ」

多くの経営者が「5S=片付け・掃除」と捉えがちですが、それは大きな誤解です。5Sは職場をきれいに見せるための活動ではなく、業務効率化・コスト削減・安全性向上を通じて人を育てる経営改善活動です。

特に「躾(しつけ)」の解釈には注意が必要です。これは「社員を叱って従わせる」という意味ではありません。役職に関係なく全員が決めたルールを自然に守れる状態=企業風土の定着を指します。押し付け型の「しつけ」は反発や形骸化を招き、逆効果になります。

👉 5Sの「躾」に違和感?誤解されがちな「躾」の本当の意味とは

誤解②:「5Sは現場に任せておけばよい」

「5Sは社員にやらせておけばいい」と考えるのも典型的な誤解です。経営者や上司が率先して取り組まない限り、社員は必ずこう考えます。

「社長がやっていないんだから、自分たちも守らなくていいよね」。

特に中小企業では、経営者と社員の距離が近い分、トップの姿勢がそのまま現場の空気に直結します。経営者がルールを守らなければ、活動は一気に崩れます。逆に、トップ自ら小さなルールを守り抜く姿勢を見せると、社員は「やらざるを得ない」と腹をくくり、活動が前に進みます。

 

【成功ポイント】経営者は「指示者」から「支援者」へ!4つの具体的な支援アクション

5S活動を成功させる最大のポイントは、経営者が「指示者」ではなく「支援者」として関わることです。丸投げでも押し付けでもなく、社員の主体性を引き出し、支援する姿勢が不可欠です。具体的には、次の4つのアクションが鍵となります。

支援①:目的とビジョンを「共有」し、活動の土台を築く

「なぜ5Sをやるのか」を曖昧にしたままでは、活動は必ず形骸化します。理想は経営者が一人ひとりと個別に面談し、目的やメリットを丁寧に伝えることです。また「生産効率20%アップ」「労災ゼロ」といった具体的な数値目標を部署単位で設定すれば、活動の指針が明確になります。

👉 5Sの足並みを揃える「個人面談」とは?
👉 5S活動のスローガン・目標の作り方

支援②:社員の主体性を「引き出し」、ボトムアップで推進する

5Sはトップダウンで押し付けるのではなく、社員主導のボトムアップ型が理想です。

経営者や上司は、部下の意見を頭ごなしに否定せず、まず「聴く耳」を持つこと。さらに、小さな予算や権限を移譲し、社員が自分で考えて進められる環境を整えましょう。5Sでの失敗は大きな損失にはならず、むしろ成長の糧になります。

👉 なぜボトムアップ式5Sが組織を変える?成功のポイントと継続の仕組みを解説

支援③:自ら行動で「手本を示し」、文化を醸成する(率先垂範)

社員が決めたルールを経営者自身が守らなければ、活動は必ず崩壊します。

逆に、トップが率先してルールを守り、現場に参加する姿を見せれば「社長がやっているのだから」と社員も本気になります。現場での努力を直接見れば、正当な評価ができ、信頼関係も深まります。

支援④:活動の停滞を「防ぎ」、継続の仕組みを作る

5Sの最初のステップ「整理」では、不要物を捨てる判断を経営者が曖昧にすると活動は止まります。「とりあえず置いておこう」は禁物。しっかりと判断基準を示すことが重要です。

さらに、月1回の振り返り会議を設け、PDCAサイクルを回すことで、活動は一過性のイベントではなく継続的な改善の仕組みになります。

👉 なぜ5S活動が続かない?継続しない理由と定着させる仕組みとは

4. 5S活動を停滞させる、経営者が注意すべき「5つの罠」

5S活動は、経営者の関わり方次第で大きく成果が変わります。良かれと思った行動が、逆に活動を止めてしまうことも少なくありません。ここでは、特に注意すべき「5つの罠」を整理します。

罠①:トップダウンで押し付けてしまう

「こうしろ」と命令するだけのトップダウンでは、社員は「やらされ感」を抱きます。主体性が育たず、活動は長続きしません。経営者はあくまで支援者であり、主役は社員であることを忘れてはいけません。

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罠②:自分だけルールを守らない「例外」を作る

社員が決めたルールを社長や上司が破ると、活動は一瞬で崩壊します。

「上が守らないのに、なぜ自分たちだけ?」という不満が広がり、モチベーションは急速に低下します。経営者自身が例外なくルールを守る姿勢が不可欠です。

罠③:反対派の説得に固執してしまう

どんな会社にも必ず「やりたくない」と考える人は2割程度存在します(2-6-2の法則)。反対派を無理に説得しようとすると、エネルギーを消耗し、全体が停滞します。まずは前向きな2割と中間層6割で活動を進め、成果を示すことが賢明です。

👉 5S活動反対派の効果的な対処法はこちら

罠④:短期的な成果を焦ってしまう

5S活動は先行投資です。導入初期は捨てる・整える・改善する作業で時間がかかり、生産が一時的に落ちることもあります。ここで焦って「数字が落ちたら困る」と活動を止めてしまうと、結局は何年経っても効率が上がりません。長期的視点で捉えることが重要です。

罠⑤:部下の意見を頭ごなしに否定する

せっかく社員が考えて出した意見を否定すると、次から誰も発言しなくなります。実現が難しいアイデアでも、一度受け止めて議論することが信頼関係を築き、組織を活性化させます。

👉 5S活動で重要なコミュニケーション|活動継続ための実践ポイント

 

FAQ

Q. なぜ経営者の関わり方が5S活動の形骸化の原因になるのですか?

5S活動は、単なる掃除や片付けではなく、職場の風土改革を目的とした取り組みです。そのため、経営者が本気で関わらなければ、社員は「やらされているだけ」と感じ、活動は形だけのものになります。経営者が姿勢を示さなければ、現場は必ず形骸化してしまいます。

Q. 「しつけ(躾)」は社員教育のことではないのですか?

いいえ。5Sにおける「躾」とは、社員を叱って従わせることではありません。役職に関係なく全員がルールを自然に守れる状態=企業風土の定着を意味します。社員教育や押し付け型のしつけではなく、全員参加で習慣化された状態を「躾」と呼ぶのです。

Q. 経営者が5Sを率先垂範しないと、なぜ活動は続かないのですか?

5Sは「決めたルールを全員で守る」ことが前提です。もし経営者が守らなければ、社員は必ずこう思います。「社長が守らないのに、なぜ自分たちだけ?」。その瞬間に秩序は崩れ、活動は停滞します。逆に経営者が小さなルールを徹底して守る姿を見せれば、社員もやらざるを得なくなり、活動が続きます。

Q. 5S活動を社員に丸投げした場合、具体的にどんな弊害が起きますか?

社員だけで進めると「やらされ感」が強くなり、形だけの活動になります。スローガンや決意表明を他人に考えさせるような状態では、活動は長続きしません。また、不要物処分などの判断を経営者がしないと活動が止まってしまい、現場の士気も下がります。結果として、ムダな時間が増え、会社の改善につながらないのです。

Q. 5S活動で経営者が果たすべき「支援者」としての役割とは何ですか?

経営者は「指示者」ではなく「支援者」として関わることが成功の鍵です。具体的には、

  • 5Sの意味や目的を明確にして共有する
  • 社員の意見を聴き、権限や予算を委譲する
  • 自らルールを守り、活動に参加して手本を示す
  • PDCAを回し続ける仕組みを整える

といった役割です。

Q. 5Sの意味や目的を社員に共有するには、どのような方法が効果的ですか?

理想は一人ひとりとの個別面談です。一斉に説明するより、社員ごとに「なぜ必要か」「どんなメリットがあるか」を丁寧に伝えると、主体的な姿勢が生まれます。さらに「労災ゼロ」「生産効率20%向上」といった具体的数値目標を部署ごとに設定すると、活動の指針が明確になります。

Q. ボトムアップ型で進めるために、経営者は何を意識すべきですか?

経営者は「聴く耳」を持ち、部下の意見を否定せずにまず受け止めることが重要です。また、少額の予算や権限を委譲し、社員が自分で考えて実行できるようにします。5Sは失敗しても大きな損害にはならず、むしろ学びの機会となるので、安心して挑戦させる姿勢が必要です。

Q. 社員の反対派がいるとき、経営者はどう対応すればよいですか?

組織には必ず反対派が約2割存在します(2-6-2の法則)。無理に説得しようとせず、まずは前向きな2割と中間層6割で活動を進めましょう。成果が見えれば、反対派の抵抗も次第に弱まります。

👉 5S活動反対派の効果的な対処法はこちら

Q. 5S活動を通じて経営者と社員の信頼関係を築くにはどうしたらいいですか?

経営者が現場に参加し、社員の頑張りを直接見ることが重要です。自らルールを守り、社員と一緒に活動することで「自分たちの努力を見てくれている」と社員が実感します。その積み重ねが正しい評価につながり、信頼関係を築く基盤となります。

まとめ:経営者の「覚悟」ある支援が、強い組織文化を創造する

5S活動の成功を左右する最大の要因は、経営者の姿勢です。
丸投げでも、命令でもなく、「絶対に会社を変える」という覚悟を持ち、社員の挑戦を支援する姿勢こそが、活動を継続させる原動力になります。

経営者が「支援者」として正しく関われば、5Sは単なる環境整備に留まりません。
社員の主体性を引き出し、部門間の壁を壊し、コミュニケーションを活性化させることで、風通しの良い強い組織文化へと発展していきます。

最初は時間や労力がかかり、成果も見えにくいかもしれません。しかし、小さなルールを全員で守り抜く経験、話し合いを通じて得られる気づきや改善は、確実に組織を変えていきます。

5S活動は「安全・効率・快適」を整えるだけでなく、社員を育て、経営を強くする最も確実な経営改善手法です。
そして、その成否は経営者自身の「覚悟」と「支援」にかかっています。

  • この記事を書いた人

上石 政代(Smile System Support 代表)

5S活動の社内定着を支援するコンサルタント・講師。
これまでに医療・介護・製造業などの現場でのべ1000名以上に研修・講演を実施し、5Sを“現場文化として根づかせる”実践支援を行っている。
現在までに、5Sによる組織風土改善支援に携わった企業は100社を超える。
Smile System Support代表・上石政代について

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