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5Sの「躾」に違和感?誤解されがちな「躾」の本当の意味とは

5Sしつけ本当の意味

5S活動は「整理・整頓・清掃・清潔・躾」の5つのステップで構成されます。

その中で最後の「躾(しつけ)」は、言葉の響きから誤解されやすい要素です。

 

「しつけ」と聞くと、子どもや部下に厳しくルールを守らせるようなニュアンスを思い浮かべる人も多いでしょう。

そのため「5Sの躾」という言葉に、少し違和感を覚える方も少なくありません。

 

本記事では、その誤解を解き、「躾」が本来意味するものを整理しながら解説していきます。

 

5S活動における「躾(しつけ)」の本当の意味とは

5S各要素の意味

まずは5Sそれぞれの意味を簡単に振り返っておきましょう。

  1. 整理(seiri)
    要るモノと、要らないモノを分類し、要らないものを捨てること
  2. 整頓(seiton)
    要るモノを、誰にでも、すぐに取り出せるようにすること
  3. 清掃(seisou)
    ゴミや汚れがない綺麗な状態を維持すること
  4. 清潔(seiketsu)
    3S(整理・整頓・整頓)が維持されている状態
  5. 躾(shitsuke)
    3Sが定着し、決められたことを守れる風土になっている状態

5Sは順序を追って進めるだけでなく、それぞれが連動して効果を発揮します。

特に最後の「躾」は、3Sと清潔がきちんと定着してこそ意味を持つ段階です。

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5Sの「しつけ」に対する誤解

「躾(しつけ)」と聞くと、多くの人がまず思い浮かべるのは“厳しくルールを守らせる”というイメージではないでしょうか。

子どもやペットに対する「しつけ」と同じ言葉であるため、5Sの躾にも同じ感覚を重ねてしまい、違和感を覚える方も少なくありません。

 

その結果、「上司が部下に独自ルールを押し付ける」「サービス残業を強いる」など、本来とはかけ離れた形で“躾”が使われてしまうケースも見受けられます。

 

しかし、5S活動における「躾」とはそうした上下関係でルールを守らせることではありません。

 

本来は、整理・整頓・清掃がきちんと徹底され、社員一人ひとりが自主的に取り組み、それが職場全体の風土として根づいている状態を指します。

つまり「行動を強制すること」ではなく、「当たり前にできている状態」を表す言葉なのです。

 

英語で言い換えると分かりやすい「躾」

もともと5Sは、5つの言葉をすべて“S”で始める標語として整理された経緯があります。

その中で「躾(しつけ)」という日本語が選ばれたことで、“厳しく守らせる”といったニュアンスが強調され、違和感につながってしまいました。

 

しかし、英語表記を見ると本来の意味が分かりやすくなります。

  • 整理 ⇒ Sort(分類する)
  • 整頓 ⇒ Set in order(正しい位置に置く)
  • 清掃 ⇒ Shine(輝く)
  • 清潔 ⇒ Standardize(標準化)
  • 躾  ⇒ Sustain(維持する)

ここで「躾」にあたるのは Sustain(持続する/維持する) です。

つまり、3Sと清潔を一時的に取り組むのではなく、続けて習慣にすることこそが「躾」の本質なのです。

 

日本語の「しつけ」では誤解されやすい部分も、英語で「Sustain」と言い換えると「続ける・習慣化する」という意味が直感的に理解できます。

この違いを知るだけで、「躾」に対する違和感も解消されるでしょう。

 

躾の効果:気づく力が育つ

5Sの最後のステップである「躾」が定着すると、職場で大きな変化が生まれます。

それは、社員一人ひとりに “気づく力” が備わることです。

 

整理・整頓・清掃が当たり前になると、

  • 「ここに不要なものが置かれている」
  • 「棚の並べ方が使いにくい」
  • 「壁が汚れている」

といった 小さな違和感に敏感に気づけるようになります。

 

この力は、単にモノや環境に対する感覚だけではありません。

問題や異常の兆し、作業のムダ、さらには同僚の表情や気持ちの変化にも気づけるようになり、仕事全体のパフォーマンスが高まります。

 

実際に、以前はゴミを見ても素通りしていた人が、自然と拾って片付けるようになる。

そんな小さな行動の積み重ねが、「見て見ぬふりをしない」風土をつくり、ミスや事故を未然に防ぐ 安全文化 へとつながっていきます。

 

躾のよくある質問

Q1. 5Sの「躾」とは何ですか?

整理・整頓・清掃が習慣化し、社員全員が自然にできている状態を指します。
日本語の「しつけ」と違って、厳しくルールを守らせることではなく、当たり前の習慣として続いている状態です。

Q2. 清潔と躾の違いは?

清潔は「3Sのルールを標準化して維持すること」。
躾は「その状態がさらに習慣として根づき、風土化していること」です。

Q3. 躾の言い換えはありますか?

英語では「Sustain(持続する/習慣化する)」と表されます。
日本語では「習慣化」「風土化」と言い換えると分かりやすいでしょう。

Q4. 躾の目的は何ですか?

正確には「目的」というより「結果」に近い言葉です。
ただし5Sの本来の目的である「安全・品質・効率・人材育成」を実現するために、躾の段階は欠かせません。

Q5. 躾はどうやって進めれば良いですか?

特別な活動をする必要はありません。
整理・整頓・清掃を徹底し、清潔として標準化・維持することを繰り返すことで、自然と習慣化=躾の状態に近づきます。

 

まとめ

5Sの「躾」は、厳しく守らせることではなく、整理・整頓・清掃が自然に習慣化された状態を指します。

英語で言う「Sustain(持続する)」が本来の意味であり、職場に根づけば「気づく力」が育ち、安全・品質を守る風土につながります。

 

躾は特別な活動ではなく、3Sと清潔を繰り返し続けた結果として訪れるゴールです。

  • この記事を書いた人

上石 政代(Smile System Support 代表)

5S活動の社内定着を支援するコンサルタント・講師。
これまでに医療・介護・製造業などの現場でのべ1000名以上に研修・講演を実施し、5Sを“現場文化として根づかせる”実践支援を行っている。
現在までに、5Sによる組織風土改善支援に携わった企業は100社を超える。
Smile System Support代表・上石政代について

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