5S活動を始めても、「どこから改善すれば良いのか分からない」と立ち止まってしまうことは少なくありません。
そんなときに役立つのが「4M分析」です。人(Man)、機械(Machine)、材料(Material)、方法(Method)の4つの視点で問題を整理することで、現場で起きている不具合やムダを客観的に見える化できます。
分類そのものに正解はありませんが、議論を通じて「どんなやり方を変えれば改善につながるか」という気づきを得られるのが大きな効果です。
本記事では、4M分析を使って問題を洗い出し、5S活動へつなげていく流れを解説します。
4M分析とは
「4M分析」とは、問題の原因を以下の4つに分類して整理する方法です。
- Man(人):従業員の知識・スキル、意識、コミュニケーション
- Machine(機械・設備):装置や工具などのハード面
- Material(材料・部品):品質や在庫、部材の扱い方
- Method(方法・やり方):作業手順やルール、業務プロセス
もともとは製造業で品質管理や事故防止に用いられてきた手法ですが、5S活動においても「問題をどこから手をつけるべきか」を考える出発点として役立ちます。
問題の洗い出しと分類の流れ
4M分析を活用する第一歩は、現場にある「問題」を洗い出すことです。
例えば、整理・整頓・清掃ができていない場所、危険を感じる場所、作業効率が悪いと感じる工程などをチームで挙げていきます。写真を撮って持ち寄ると、具体的な議論がしやすくなります。
次に、その一つひとつの問題が「人」「機械」「材料」「方法」のどれに当てはまるかを分類します。
分類は正解を求めるものではなく、原因を考えるための出発点です。議論を通じて「どの視点から改善に取り組むべきか」に気づくことが大切です。
分類の具体例
実際に問題を4Mに分類すると、次のようになります。
- 人(Man)
例:ルールが決まっているのに物を元の場所に戻さない。清掃の責任が曖昧で汚れが放置される。 - 機械(Machine)
例:設備の老朽化による頻繁な故障。操作が複雑で作業が遅れる。 - 材料(Material)
例:材料の品質が一定でなく、不良の原因になる。在庫が多すぎてスペースを圧迫している。 - 方法(Method)
例:戻す場所のルールが決まっていない。作業フローが不明確で物がランダムに移動してしまう。
同じ「散らかっている」という問題でも、ルールが無ければ「方法」、ルールがあっても守られていなければ「人」といった具合に、見方によって分類は変わります。正解を求めるものではなく、改善の方向性を考えるための手掛かりと考えることが大切です。
4M分析から得られる気づき
4M分析は「正しく分類すること」が目的ではありません。同じ問題でも、人によって捉え方が異なります。大切なのは、議論を通じて「なぜその問題が起きているのか」という気づきを共有することです。
実際に研修で4M分析に取り組むと、多くの問題が「方法(Method)」に振り分けられる傾向があります。これは「やり方を変えれば改善できる」という共通認識が生まれた証拠です。こうした気づきは、現場での改善意欲を高め、5S活動の必要性を実感するきっかけになります。
改善へのつなげ方
4M分析はあくまで出発点です。分類によって「問題がどこに寄っているか」を把握したら、次は5S活動の中で一つひとつ改善していきます。
例えば「整頓できていない作業台」という問題を「方法」に分類したとします。その場合は「戻す場所のルールを決める」「表示を工夫する」といった5Sの具体的な行動で解決を図ります。
このように、4M分析で見えた問題を改善に結びつけることで、活動の必要性が実感でき、現場のモチベーションも高まります。改善は一度で完璧を目指すのではなく、小さな試行と修正を繰り返すプロセスが重要です。
まとめ
5Sを成功させるにはまず現場の問題を洗い出すことが不可欠で、4M分析はその出発点として有効です。
4Mで「どの視点に寄っているか」を可視化すると原因の見落としや傾向が分かるものの、分類自体が解決策ではありません。
分類を仮説として、5Sによる小さな介入で短期検証し、効果が出たら標準化する(把握→仮説→試行→検証→標準化)のプロセスを回すことが重要です。
これにより4Mは単なるラベリングを超えて実務的な価値を持ちます。