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売上が上がらなくても利益は出る!5Sで「見えないコスト(ムダ)」を削減し、高収益体質へ変わる方法

売上が上がらなくても利益は出る!5Sで「見えないコスト(ムダ)」を削減し、高収益体質へ変わる方法

「原材料費が高騰して利益が出ない」
「人件費が重くのしかかっている」

昨今の物価高や人手不足により、多くの中小企業が厳しい経営環境に置かれています。
しかし、外部環境(景気や相場)を変えることはできません。

今、経営者が目を向けるべきは、「売上をどう上げるか(攻め)」よりも、「社内のムダをどう削ぎ落とすか(守り)」です。
実は、社内には「目に見えないコスト」が大量に眠っています。

今回は、5S活動(整理・整頓)を使ってこの「見えないコスト」を削減し、売上がそのままでも利益が出る「高収益体質」へ変わる方法について解説します。

5S活動は「最強のコスト削減」である

5S活動(整理・整頓・清掃・清潔・躾)を、「ただ職場をきれいにする美化活動」だと思っていませんか?
それは大きな誤解です。

5S活動の真の目的は、「効率的な職場」を作り、「利益」を生み出すことにあります。
実際に、弊社が指導に入った企業様では、以下のような劇的な成果が出ています。

  • 残業時間が20%カットできた(人件費削減)
  • 消耗品費が年間60万円削減できた(経費削減)
  • 棚卸にかかる時間が4時間→1時間に短縮された(生産性向上)

なぜ、片付けるだけでこれほどの利益が出るのでしょうか?

それは、5Sが「7つのムダ」を徹底的に排除する活動だからです。

あなたの会社に潜む「3つの見えないコスト」

トヨタ生産方式には「7つのムダ」という考え方がありますが、その中でも特にオフィスや現場で利益を食いつぶしている「3大コスト」をご紹介します。

1. 「探す」ムダ(人件費の垂れ流し)

あなたの会社では、社員が「あれ、どこだっけ?」とモノや書類を探している時間がありませんか?
ある調査によると、ビジネスパーソンは年間150時間も「探し物」をしています。

これを時給換算すると、社員一人あたり年間約35万円分の給料をドブに捨てている計算になります。
社員が10人いれば、350万円の損失です。

5Sの「整頓」でモノの定位置を決めれば、この350万円がそのまま利益に変わります。

2. 「在庫」のムダ(現金の凍結)

「安いからまとめて買っておこう」と、コピー用紙や部品を大量にストックしていませんか?
必要以上の在庫は、以下のコストを生みます。

  • 場所代:在庫を置くための倉庫代や家賃
  • 管理費:在庫を数えたり移動させたりする人件費
  • キャッシュフロー悪化:現金が「モノ」に変わり、眠っている状態

5Sでは「適正量(定量)」を決めて管理します。
「ここにある分しか持たない」と決めることで、ムダな買い物がなくなり、手元の現金(キャッシュ)が増えます。

3. 「ミス・手戻り」のムダ(信用の低下)

散らかった職場は、ミスを誘発します。
「最新の図面がどれか分からない」「部品を取り違えた」といったミスは、やり直しのための材料費や人件費(残業代)という二重のコストを生みます。

さらに、不良品をお客様に届けてしまえば、会社の信用というプライスレスな資産まで失ってしまいます。

 

👉 トヨタ生産方式の基本『7つのムダ』を解説!覚え方と優先順位

「動作経済の4原則」で作業を楽にする

ムダをなくすための具体的なテクニックとして、「動作経済の4原則」があります。

  1. 動作の数を減らす(道具を持ち替えない)
  2. 動作を同時に行う(両手を使う)
  3. 動作の距離を短くする(歩かない・手を伸ばさない)
  4. 動作を楽にする(しゃがまない)

例えば、「よく使う工具を手元に置く(距離を短くする)」だけで、1回あたりの作業が数秒縮まります。
「たった数秒?」と思うかもしれませんが、全社員が毎日繰り返せば、年間で膨大な時間の創出になります。

👉 動作経済とは?製造業で作業効率と生産性を上げる4原則×3視点の改善手法

 

5Sによるコスト削減についてのQ&A

Q. 製造業ではない(オフィス業務)ですが、5Sでコスト削減できますか?

A. はい、可能です。むしろオフィスの方が「書類探しの時間」や「文具・備品の過剰在庫」といったムダが多く潜んでいます。データの整理整頓(サーバー内の5S)を行うことで、事務処理スピードが上がり、残業代削減に直結した事例も多数あります。

Q. 社員が「忙しい」と言って5Sに取り組んでくれません。

A. それは「5S=仕事が増える」と誤解しているからです。「5Sをやれば今の仕事が楽になり、早く帰れるようになる」というメリット(利益)を伝えてください。まずは1日10分の整理から始めることで、徐々に効果を実感してもらえます。

Q. 効果が出るまでにどれくらいの期間がかかりますか?

A. 早ければ1ヶ月目で「探し物が減った」「スペースが空いた」という変化を実感できます。ただし、それが「利益(決算書の数字)」として現れるまでには、半年〜1年程度の継続が必要です。弊社の研修では、まずは半年間で社内の風土と仕組みを変えることを目指します。

まとめ:不況に強い会社は「足元」がきれい

利益が出ている会社ほど、バックヤードや倉庫が驚くほど整理されています。
それは、「お金を生まない行動(ムダ)」を徹底的に嫌い、排除しているからです。

5S活動によって生まれた時間や資金は、会社の未来を作るための「攻めの投資(新商品開発や人材育成)」に回すことができます。

「守り(コスト削減)」を固めることで、「攻め(成長)」の原資を作る。
これが、不況に強い高収益企業の正体です。

「ウチの会社、ムダだらけかもしれない…」と感じた経営者様。
まずは足元の5Sから見直してみませんか?

  • この記事を書いた人

上石 政代(Smile System Support 代表)

5S活動の社内定着を支援するコンサルタント・講師。
これまでに医療・介護・製造業などの現場でのべ1000名以上に研修・講演を実施し、5Sを“現場文化として根づかせる”実践支援を行っている。
現在までに、5Sによる組織風土改善支援に携わった企業は100社を超える。
Smile System Support代表・上石政代について

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