「5Sパトロール」とは、職場の整理・整頓・清掃・清潔・躾の状態を定期的に点検し、改善につなげる活動です。
単なる点検にとどまらず、現場の小さな乱れや危険に気づき、それを改善につなげる仕組みとして、多くの会社で実践されています。
しかし実際には、「誰が参加するのか」「どのくらいの頻度でやるのか」「どんなチェックリストを使えばよいのか」が分からず、形だけの活動に終わってしまうケースも少なくありません。
この記事では、5Sパトロールの目的・効果・進め方・チェックリスト・全員参加と他部署パトロールの重要性を、事例やFAQも交えて解説します。現場ですぐに実践できるチェックシートも無料でご用意していますので、ぜひ参考にしてください。
もくじ
5Sパトロールとは — 目的と基本
5Sパトロールとは、職場の整理・整頓・清掃・清潔・躾の状態を、定期的に巡回して確認する活動です。現場の「今」をチェックし、改善点を見える化することで、安全・品質・効率の向上につなげます。
ただし、多くの会社では、このパトロールを管理職や5S委員会のメンバーだけで実施しているのが実情です。これでは一部の視点に偏りやすく、また「やらされ感」が強くなり、現場の改善意識が育ちにくいという課題があります。
本来の目的は、単なるチェックではなく「気づき」を共有し、全員が改善に主体的に関わることです。そのため、役職や担当にかかわらず全員が参加することが望まれます。実際に自分の目で現場を確認することで、「整理整頓は誰か任せではなく、自分たちで守るもの」という意識が定着していくのです。
5Sパトロールの効果
パトロールならではの効果 — “現場を見て気づく”仕組み
5Sパトロールの一番の効果は、普段の業務では気づきにくい小さな乱れや危険を、現場を歩くことで発見できることです。机上の管理や写真ではわからない「使いにくさ」「危なさ」「乱れ」が、実際にその場を回るからこそ見えてきます。
- 安全面では、通路の一部が塞がれていないか、直置きされた物がないか、配線が足元の妨げになっていないかを直接確認でき、労災の芽を早期に摘むことができます。
- 品質面では、工具や部品が所定の位置に戻されているか、清掃が行き届いているかを点検することで、不良やトラブルの温床を未然に防げます。
- 効率面では、「探す」「持ち替える」「動線が長い」といったムダが現場レベルで浮かび上がり、改善提案につなげやすくなります。
気づきを共有し、改善へと回す
パトロールで出てきた指摘や気づきは、単に報告して終わりではありません。その場でチームで共有し、次の改善につなげることがポイントです。
現場を見ながら対話を重ねることで、「あ、こうすればもっと安全になる」「ここは次回までに直そう」といった小さな改善が積み重なり、やがて大きな成果へと発展します。
継続することで“習慣化”が進む
パトロールを重ねると、社員は自然に「異常や乱れを探す目」を持つようになります。これは5S活動の最終段階である“躾”の育成につながり、見て見ぬふりをしない風土を職場に根づかせるのです。
5Sパトロールの進め方
実施頻度
私たちは、5Sパトロールを月に1回実施することを推奨しています。定期的に職場を点検することで、乱れや危険を早期に発見でき、改善につなげやすくなります。
誰が行うか
一部の管理職や5S委員会に任せるのではなく、全員で行うことが大切です。限られた人だけがパトロールをすると、視点が偏ったり「やらされ感」が広がったりします。全員で実施することで、一人ひとりが現場を見直すきっかけとなり、改善意識が育ちます。
チェック後の流れ
パトロールの結果は記録して終わりではなく、その後のディスカッションで共有し、改善へとつなげることが欠かせません。気づきを行動に変えていくことで、5Sパトロールは単なる点検活動ではなく、改善サイクルを回す仕組みになります。
使える!5Sパトロールチェックリスト
5Sパトロールを効果的に行うには、チェックリストの活用が欠かせません。整理・整頓・清掃・清潔・躾の観点から項目を設け、点数やコメントを残すことで、現場の状態を客観的に評価できます。
当サイトでは、すぐに現場で使える「5Sチェックシート(無料)」を用意しています。
PDF形式でダウンロードして印刷すれば、そのまま現場で記入でき、日々の改善活動に役立てられます。
パトロールを「見て終わり」にせず、記録に残し、改善につなげるツールとして、ぜひご活用ください。
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5Sパトロールを全員で行う意味
全員でパトロールするメリット
5Sパトロールは、特定の人に任せるのではなく、現場の全員で行うことに意味があります。
- 気づきの幅が広がる:立場や役割によって視点は異なります。現場作業者、事務担当、管理職など、異なる目でチェックすることで、偏りのない指摘が得られます。
- 当事者意識が芽生える:自分で現場を見て点検する経験を通じて、「職場を良くするのは自分たちだ」という感覚が生まれます。
- 改善が加速する:気づいた本人がすぐに改善につなげやすくなり、スピード感のある活動になります。
代表者だけが行う場合の問題点
一方で、管理職や5S委員会の代表者だけでパトロールをすると、次のような問題が起きやすくなります。
- 視点が偏る:限られた人の目線に頼ることで、現場の細かい問題を見落とす可能性があります。
- やらされ感が広がる:一部の人が点検し、他の人は指摘されるだけ…という構図になると、改善が「他人ごと」になってしまいます。
- 改善が続かない:参加者が限られていると、活動の熱量が保てず、やがて形骸化してしまいます。
継続するための工夫
全員参加のパトロールを続けることで、社員一人ひとりに「気づく力」が育ちます。小さな異常や乱れに敏感になり、見て見ぬふりをしない風土が現場に根づいていきます。これこそが、5Sパトロールを続ける最大の価値です。
他部署もパトロールする重要性
5Sパトロールをさらに効果的にするには、自分の部署だけでなく他部署も回ることが欠かせません。全員参加に加え、他部署を見て回ることで次のような効果が得られます。
1. 自分では気づけない問題を発見できる
毎日同じ場所で働いていると、乱れや危険が当たり前になり、気づきにくくなります。
他部署の視点が入ることで、「自分たちでは気づけなかった問題」を見つけることができ、改善の幅が広がります。
2. 他部署を理解し、協力体制が強まる
他部署を回ることで「この部署はこういう工夫をしているんだ」と互いを知るきっかけになります。
お互いにフィードバックを行うことで、部署間のコミュニケーションが活性化し、会社全体として協力しやすい風土につながります。
3. ごまかしを防ぎ、コンプライアンス強化につながる
他部署の目が入ると、不良品を隠すなどの「ごまかし」がしにくくなります。
これは重大な不良やコンプライアンス違反の未然防止にもつながり、健全な職場環境を保つために大きな効果を発揮します。
小さな気づきが習慣に変わった事例
ある会社では、5Sパトロールを始めた当初、「ゴミが落ちていても気にしない」「通路がふさがれていても見過ごす」といった状態が当たり前になっていました。
しかし、全員でパトロールを続けるうちに、社員が「ここに置いたら危ない」「このままでは不便だ」と自分で気づき、自然に声を掛け合うようになっていきました。
例えば、床に落ちているゴミを見かけた社員が、誰に言われなくても拾って捨てるようになったケースがあります。これは小さな行動ですが、「見て見ぬふりをしない風土」が現場に定着した大きな成果といえます。
また別の会社では、パトロールの指摘をもとに整理・整頓が進み、探し物の時間が大幅に減りました。「パトロールをやったからこそ、普段の仕事のやりにくさに気づけた」という声も上がっています。
このように、5Sパトロールは単なる点検ではなく、気づきを行動に変える仕組みとして定着していくのです。
FAQ:5Sパトロールについてよくある質問
Q. 5Sパトロールとは何ですか?
職場の整理・整頓・清掃・清潔・躾の状態を定期的に点検し、改善につなげる活動です。単なる点検ではなく、「現場を見て気づく力」を養い、社員全員で改善を続けていくための仕組みです。
Q. なぜ5Sパトロールが必要なのですか?
日常の業務では見過ごされがちな小さな乱れや危険を、定期的に確認することで早期に改善できます。また「気づきを共有して改善に結びつける」習慣をつくることで、5Sが職場に根づいていきます。
Q. どのくらいの頻度で実施すればよいですか?
私たちは月1回以上の実施を推奨しています。定期的に行うことで改善のリズムが生まれ、職場の乱れを放置せずに済みます。
Q. 誰が5Sパトロールに参加すべきですか?
管理職や5S委員会だけに任せず、職場の全員で行うことが大切です。特定の人だけが実施すると視点が偏りやすく、改善が「他人ごと」になってしまいます。全員で行うことで当事者意識が育ちます。
Q. どんな観点でチェックすればいいですか?
まずは「5Sを通してどんな会社にしたいのか」を話し合い、その目的を軸にチェック項目を決めるのがおすすめです。その上で、整理・整頓・清掃の観点をもとに、職場の状態を確認します。
Q. 5Sパトロールを続けるコツはありますか?
点検を「義務」ではなく「改善のきっかけ」として位置づけることです。パトロールで出た指摘を記録して共有し、ディスカッションで改善につなげる。このサイクルを回すことで活動が形骸化せず、自然に定着していきます。
Q. 製造業以外の職場でもパトロールは役立ちますか?
はい。医療・介護、オフィス、営業部門など、あらゆる職場で効果があります。どんな職場にも必ず問題はあります。5Sは業種を問わず「働きやすい環境づくり」の基本です。
まとめ
5Sパトロールは、点検で終わらず気づきを改善につなげる仕組みです。
月1回以上、全員で取り組むことで視点が広がり、当事者意識も育ちます。
小さな気づきの積み重ねが、やがて安全・品質・効率を高め、見て見ぬふりをしない風土を育てます。