5S活動に関する本は数多く出版されていますが、選ぶ際に大切なのは「手順を知ること」だけではありません。
本来の目的は、職場を整えることで社員が気づき、自ら動く力を育み、組織全体が成長していく仕組みをつくることにあります。
本記事では、そうした本質を理解しつつ実践に役立てられる以下の書籍3冊を厳選しました。
- 『図解・トヨタの片づけ』/(株)OJTソリューションズ
- 『トヨタ流「5S」最強のルール』/原マサヒコ
- 『人を育み、利益をもたらす 会社を強くする習慣』/古芝保治
これから5Sを学びたい方にも、すでに取り組んでいる現場で次の一歩を探している方にも、参考となる内容をまとめています。
5Sを学ぶおすすめ書籍【厳選3冊】
『図解・トヨタの片づけ』
著者:株式会社OJTソリューションズ/出版社:KADOKAWA/刊行:2013-11-12
本書は、1960年代前半から現在までトヨタの工場や開発などで40年活動し、現在OJTソリューションで人材育成のトレーナーとして活躍する、トヨタの元現場リーダーたちの知恵とノウハウを凝縮した1冊です。
もくじ
- CHAPTER 1:トヨタ流「片づけ」で仕事が変わる!うまくいく!
- CHAPTER 2:ムダを減らすトヨタの「整理術」
- CHAPTER 3:仕事を効率化させるトヨタの「整頓術」
- CHAPTER 4:トヨタ流片づけが「習慣化」する方法
トヨタでは「5Sは仕事の基本」と位置づけられており、新入社員の研修で徹底的に指導されます。
本書を読むと、その5S活動こそがトヨタ生産方式の土台であることに深く納得できるはずです。
トヨタ流の片づけは、ムダを排除し、生産効率を高め、ひいては売上向上にもつながります。
片づけは単なる整理整頓ではなく、あなたの職場や働き方を変える「ビジネスツール」なのです。
前書きでも述べられているように、本書を通じて「なぜ5S活動によって業務効率が改善するのか」「どのような成果が生まれるのか」が理解できます。
さらに、5Sが社員やリーダーの成長を支える理由についても腑に落ちる内容になっています。
また、イラストが豊富で解説がわかりやすいため、初心者が5Sの基礎から奥深さまで学ぶ入門書として最適です。
具体的な取り組み方や実例も紹介されており、「自分の職場でもすぐ実践してみよう!」という意欲を引き出してくれる一冊です。
『トヨタ流「5S」最強のルール』
トヨタ流「5S」 最強のルール ~生産性“劇的向上"ノウハウを2時間のストーリーで学ぶ~
著者:原マサヒコ/出版社:大和書房/刊行:2018-03
物語仕立てで5Sの原理と現場でのルール化を分かりやすく伝える一冊。読みやすさが高く、経営層から現場リーダーまで腹落ちしやすい構成です。
手順だけでなく「なぜそれをやるのか」を示すので、本質理解の教材として配布しやすい点が特徴です。
もくじ
プロローグ:ドSコンサル女子エリカによる5S活動、始動!
第1章:整理
1.私たちは、なぜ「整理」をする必要があるのか?
2.まずは不要なモノを減らしなさい
3.捨てるものの基準を決めなさい
4.どうしても捨てられない時にすべき3つのこと
第2章:整頓
1.「整頓」は何からしていくべきなのか
2.必要なものをすぐに探し出せるようにしなさい
3.整頓のキモは3つの「定」
4.扉と蓋は全部、捨ててしまえ
第3章:清掃
1.なぜ、何のために「清掃」をするのか
2.清掃の手順を叩き込んでおきなさい
3.清掃道具も"定置"がキモ
4.汚れの発生源を見つけて対策しなさい
第4章:清潔
1.「清潔」とは維持するいことである
2.身だしなみは「お店の顔」「会社の顔」
3.体調管理は身に着けるべき「能力」である
4.清潔は、「見える化」と「見せる化」も重要だ
第5章:躾
1.礼儀もできなていないのにビジネスを語るな
2.躾とは、心身が美しいことを指す
3.トップ自らが手を動かし、足を動かしなさい
4.行動を促す仕組みを作りなさい
エピローグ:ドSなエリカの5S活動の成果
「ドSのコーチが5Sを教える」というダジャレのような着想から生まれた、物語仕立てで学べる5Sの本です。
舞台は都内の大型書店チェーン「呉越(ごえつ)書店 四谷本店」。
物語は、竹刀を片手にした女性が突然この書店に現れるところから始まります。
彼女の名は上条エリカ。書店社長が送り込んだ経営コンサルタントで、形だけに終わっていた5S活動を「真の5S」へと鍛え直していきます。
厳しくも的確な指導のもと、書店は少しずつ劇的な変化を遂げていくのです。
ストーリーの合間には実践的な解説も盛り込まれており、読み進めるうちに自然と5Sの方法や効果が理解できる構成になっています。
本書が伝える「真の5S」の成果とは――商品の品質向上、安全性の確保、業務効率の改善、人材マネジメントなど、職場のあらゆる課題が解消されること。
先に紹介した『トヨタの片づけ』と同様に、トヨタ流5Sの本質が体系的かつわかりやすく示されています。
「5Sは仕事の基本」というトヨタの教えを、物語を楽しみながら学べるのも本書の魅力です。
5Sをこれから導入しようという現場にも最適で、定番の一冊としてぜひおすすめしたい内容です。
2時間ほどで一気に読み切れる手軽さも嬉しいポイントです。
『人を育み、利益をもたらす 会社を強くする習慣』
著者:古芝保治/出版社:ダイヤモンド社/刊行:2016-07
町工場の再生事例を中心に、3Sを通じた組織変革プロセスを示す事例集。単なる工程改善に留まらず、経営視点と人材育成をつなぐ内容が充実しており、経営に伝える際の説得材料としても使えます。ケーススタディが豊富なので、実践に落とし込むイメージが掴みやすいです。
もくじ
- 第1章:奇跡の復活劇は「捨てること」から始まった
- 第2章:会社を強くする!枚岡流「徹底3S」の秘密
- 第3章:スッキリした職場に大変身!「モノと場所の徹底3S」
- 第4章:欲しい情報が3秒で手に入る「情報の徹底3S」
- 第5章:社員が育つ「心の徹底3S」
- 第6章:「徹底3S」で見違えるように生まれ変わった9社
- 第7章:これでカンペキ!「徹底3S」9つのルール
崖っぷちの町工場をV字回復へ導いた「3S活動」で有名な、枚岡合金工具株式会社の古芝会長が著した一冊です。
倒産の危機に直面した同社が、再起をかけて3S活動に挑み、見事に復活を遂げたサクセスストーリーが語られています。あわせて「なぜ3S活動が必要なのか」「3Sを徹底することで得られるメリットは何か」を学べる内容となっています。
さらに、本書では3S活動によって劇的に変革を遂げた9社の事例も紹介されています。そこから、3Sに取り組む企業が「なぜ倒れにくくなるのか」が具体的に理解できます。経営に悩む方や打開策を探している経営者には、ぜひ手に取っていただきたい一冊です。
また、枚岡合金の3S活動は「工場見学」という形で体験することも可能です。これまでに国内外を問わず大手から中小まで4,000社以上が訪問し、テレビ・新聞・雑誌など各種メディアでも広く取り上げられています。
私自身も実際に工場見学へ足を運び、その徹底ぶりを目の当たりにしました。
枚岡合金さんのプレゼンテーションの動画も参考にご覧ください。
ご紹介した3冊はいずれも信頼できる一般書籍で、5Sの基本だけでなく組織の成長や人材育成とのつながりまで学べます。
入門から現場実践まで幅広く役立つ、安心して手に取れるラインナップです。
当社からのご案内
最後に、当社代表がこれまでの現場経験をもとに執筆した電子書籍も一冊ご案内させていただきます。
実際の改善事例や人材育成の視点を交えてまとめており、「5Sで人と組織をどう変えていけるか」を知りたい方には参考になる内容です。
『人を育て組織を強くする「5S活動」のすごい力』
著者:上石政代(スマイルシステムサポート代表)/電子書籍(Kindle版)
この本は「職場をきれいにする活動」と思われがちな5Sの本質を、「社員が育ち、風土が変わる」という視点から描いた一冊です。
著者が20年以上、製造業からサービス業まで幅広い企業で行ってきた研修・コンサルティングの経験をもとに、実際の事例とともに、5Sがどのように人を変え、組織を変えていくのかを紹介しています。
もくじ
- 第一章 なぜ5S活動が社内改革に役立つのか
- 第二章 5S導入企業の成長の軌跡
- 第三章 5Sそれぞれの意味と活動
- 第四章 5Sを継続させ効果を出していく活動形態
本書は、単なる整理整頓の手法解説ではなく、「社員の主体性をどう引き出すか」「組織が継続的に成長する仕組みをどう築くか」 に焦点を当てています。
導入初期の反発やマンネリ期の壁、二代目・三代目経営者が直面しやすい人材課題など、実際の現場で起きたリアルなエピソードを数多く紹介。現場の息づかいを感じながら学べる構成になっています。
「5Sを始めたいが意味があるのか不安」
「続けても成果が見えない」
「社員にもっと自主性を持って動いてほしい」
――そんな悩みを抱える経営者やリーダーの方に向け、単なる改善活動を超えて“組織改革のヒント”となる一冊を目指しました。
→ Kindleで配信中。気になる方はぜひチェックしてみてください。
まとめ
5S活動に関する本は数多く出版されていますが、大切なのは「手法を学ぶこと」だけでなく、その先にある人と組織の成長につなげることです。
今回ご紹介した書籍はいずれも、入門から実践まで安心して手に取れる内容であり、職場の改善を進める上で確かな指針となります。
まずは一冊を手に取り、自分たちの現場にどう活かせるかを考えることが、5Sを本当に根づかせる第一歩です。
読書をきっかけに、職場がより安全で快適になり、社員一人ひとりが主体的に動く組織へと成長していくことを願っています。