
もくじ
なぜ多くのAI導入は失敗するのか
AI導入に失敗する会社には、かなり共通したパターンがあります。
それは 「今やっている業務を、そのままAIに置き換えようとする」 ことです。
「そのまま自動化」が生む三重のムダ
現場でよく見るのは、次のような流れです。
- 手間がかかっている業務がある
- 人がしんどそうにやっている
- だからAIで自動化しよう
一見、正しそうに見えます。しかし、ここに決定的な落とし穴があります。
その業務自体が、
- そもそも要らない
- やり方が歪んでいる
- 例外だらけで整理されていない
この状態のままAIを入れるとどうなるか。
- ムダな仕事を高速化する
- 例外処理のために人が余計に振り回される
- 「AIの世話」という新しい仕事が増える
結果、「人は楽になるはずだったのに、逆に複雑になった」という現象が起きます。
AIは業務の“質”を上げない
ここが重要なポイントです。
AIは「ある業務を、速く・大量に・正確にやる」 ことは得意です。しかし、「その業務が本当に必要か」 は判断できません。
つまり【ダメな業務 × AI = ダメな業務が爆速になるだけ】
AIは“魔法”ではなく、増幅装置です。歪んだ業務構造を、そのまま拡大してしまう。
だからこそ、2026年の鉄則がここにあります。
2026年の鉄則:Redesign, don’t automate
自動化する前に、再設計せよ。
これは単なるスローガンではありません。
現場でAIを効かせるための、実務的な順番です。
AIの前にやるべき問い
AI導入の前に、必ず投げるべき問いは次の3つです。
- この仕事、本当に必要か?
- もっと減らせないか?
- 並び替えたら、そもそも発生しなくならないか?
この問いに向き合わずにAIを入れると、AIは「現場の違和感」をすべて無視して動きます。
「減らす・並べ替える・やめる」が先
ここで登場するのが、5S活動です。
多くの人は5S活動を「整理整頓・掃除の活動」だと思っています。
しかし、実務で見る5Sの正体は違います。
5Sとは、業務を疑い、削り、組み替えるための思考法です。
5Sは「掃除」ではなく、業務再設計の思考法である
整理=仕事を減らす力
整理とは、「要る・要らないを分け、要らないものを捨てる」ことです。
これは物だけの話ではありません。
- 毎月やっているが、誰も見ていない資料
- 惰性で続いているチェック作業
- 昔のトラブル対策のまま残っているルール
これらはすべて「整理」の対象です。
AI導入前にやるべき整理とは、仕事そのものを減らすことです。
整頓=判断をなくす設計
整頓とは、「誰でも・迷わず・同じ行動が取れる状態をつくる」ことです。
AIが苦手なのは、
- 判断基準が曖昧
- 人によってやり方が違う
- 例外が多い
という業務です。
整頓が進んだ現場では、
- 判断ポイントが減り
- ルールが見える化され
- 例外が整理される
結果、AIが扱える業務に変わる。
清掃=異常を検知する仕組み
清掃は「きれいにする」ことではありません。
本質は、異常に気づける状態を保つこと。
- いつもと違う
- 何か増えた
- 流れが詰まっている
この「違和感」に気づけない現場でAIを入れると、AIは間違いを間違いのまま処理し続けます。
清潔・躾=再設計を回し続ける力
清潔・躾の段階に入ると、
- ルールが守られ
- 見直しが当たり前になり
- 改善が習慣化される
ここまで来て、初めてAIが“効き続ける”現場になります。
5Sを飛ばしてAIを入れた現場で起きる典型的な失敗
探し物が減らないAI
「検索AIを入れたのに、探し物が減らない」
原因は単純です。整理されていない情報を、AIに投げている。
ゴミ山の中に優秀な探索ロボットを放り込んでも、
ゴミ山はゴミ山のままです。
書類が増えるRPA
RPAで帳票作成を自動化した結果、
- 以前より帳票が増え
- 誰も見ないデータが量産され
- 管理コストが増える
これは「整理」を飛ばした典型例です。
会議を量産する議事録AI
議事録AIを入れた結果、
- 会議が減るどころか増え
- 議事録が溜まるだけ
- 意思決定は変わらない
会議そのものが整理されていないからです。
属人化を加速させるチャットボット
FAQボットを作ったが、
- 回答は特定の人しか直せない
- 更新が止まり
- 結局その人に聞く
業務の整頓がされていないと、
AIは属人化を“固定化”します。
「5S→AI」で初めて起きる現場の変化
AIが効く現場の共通点
AIがうまく機能している現場には共通点があります。
- 仕事が少ない
- 流れがシンプル
- 判断基準が明確
- 例外が整理されている
これは偶然ではありません。
5Sが回っている現場の特徴です。
5SはAI時代の基礎体力
AIは「考えなくていい仕事」を奪います。
逆に言えば、
考え続ける現場だけがAIを使いこなせる。
5Sとは、
現場に「考える力」を取り戻す訓練です。
まとめ|AIを入れる前に、まず5Sを疑え
AI導入で失敗したくないなら、やるべき順番は明確です。
- 業務を疑う
- 5Sで削り、整え、見える化する
- その上でAIを使う
5Sは掃除活動ではありません。業務再設計の思考法です。
AIを活かすか、振り回されるか。その分かれ道は、導入前にもう決まっています。