
もくじ
なぜ今**「5S活動」が「IT・DX」**の成功に必要なのか?
- 「DXを進めたいのに、現場がついてこない」
- 「ITツールを入れたが、結局使われていない」
- 「共有サーバーのフォルダが迷宮入りしていて、誰も整理しようとしない」
こうした悩みは、業種や企業規模を問わず多くの現場で聞かれます。
そして、その根本原因を辿ると、意外にもテクノロジー以前の問題に行き着くことが少なくありません。
それが、
情報・業務・ルールが整理されていない状態です。
5S活動というと、
「工場の整理整頓」「掃除の取り組み」
というイメージを持たれがちですが、本質はそこではありません。
5Sとは本来、
👉 人が考えやすく、動きやすくなる“環境”をつくる活動
です。
この記事では、
- 5S活動をIT・デジタル領域にどう展開するのか
- なぜ5SがDXの土台になるのか
- 現場主導でIT・DXを“使いこなす組織”をどう作るのか
を、「精神論」ではなく具体例ベースで解説していきます。
5S活動 × IT × DX
この3つは、実は切り離せない関係にあります。
最新ツールも「ゴミ屋敷」では動かない
「5S活動(整理・整頓・清掃・清潔・躾)」というと、工場の工具管理やオフィスの掃除を想像されがちです。
でも、これからの時代に同じくらい重要なのが、サーバー・クラウド・PCの中を対象にした「情報の5S」です。
1. AI導入の前に立ちはだかる「物理的」な壁
物理的な片付けと同じで、不要なモノが溢れている部屋に最新の「全自動お掃除ロボット(AI)」を入れても、障害物にぶつかって動けません。データ活用もまったく同じで、「要るデータ」と「要らないデータ」が混在したままAIに学習させても、精度の低い答えしか返ってこなくなります。
ここで多くの企業がつまずくのが、「整頓(並べ替え)」から始めてしまうこと。
本来の5Sは順番があり、最初にやるべきは整理=徹底的に分けて、不要を処分することです。
DXやAIは“導入すれば賢くなる魔法”ではなく、土台(データ・情報環境)が整って初めて性能を発揮する道具なんですね。
2. 多くの企業が抱える「見えない損失」
情報が整理されていない損失は、「なんとなく時間を取られる」レベルに見えて、実はかなり深刻です。
たとえば マッキンゼー は、社内情報を探したり、助けてくれる人を探したりする行為に、勤務時間の“約5分の1(nearly 20%)”が使われていると示しています。
つまり「探す・確認する・人に聞く」が常態化している職場では、DXツールを入れても、その効果が“前提条件”で相殺されがちです。
また、ガートナーの調査では、デジタルワーカーの47%が、仕事に必要な情報やデータを見つけるのに苦労していると報告されています。
こうした状態のままでは、AI・RPA・BIなどを導入しても「入力がバラバラ」「格納場所が不明」「最新版がわからない」といった“手前の詰まり”で止まってしまいます。
オフィスとPCを守る「情報の5S」とは?
「情報の5S」とは、サーバー・クラウド・PCの中を、5S(整理・整頓・清掃・清潔・躾)の考え方で整え、「いつでも、誰でも(AIでも)、すぐに取り出せる状態」をつくることです。
言い換えると、IT化・DXで成果を出すための「データの使いやすい環境づくり」です。
トヨタ式の「ムダ」で見ると、デジタルの問題点がハッキリする
トヨタ生産方式の「ムダ」の考え方で、デジタル環境の“詰まり”を見える化すると、やるべきことが一気に明確になります。
- 在庫のムダ(サーバー容量の圧迫)昔のバックアップデータ、重複ファイル、「いつか使うかも」で残した資料が積み上がり、保管も管理もコスト化します。
- 動作のムダ(探す・調べる)フォルダ階層が深すぎる/命名がバラバラで検索できない/開いてみないと中身が分からない——これが毎日の“探し物”になります。
この2つを減らすだけでも、「5S活動 IT」「5S活動 DX」でよく聞く“停滞感”はかなり改善します。
👉 トヨタ生産方式の基本『7つのムダ』を解説!覚え方と優先順位
デジタルでも鉄則は同じ。「整理」から始める
5Sは「整理→整頓→清掃→清潔→しつけ」の順番で進めるのがポイントで、特に最初の「整理」が最優先です。
ここで言う整理は「きれいに整える」ではなく、必要・不要・急がないに分け、不要を徹底的に処分すること。
デジタルに置き換えると、まずは
- 「同じ内容のファイルが複数ある」
- 「最新版がどれか分からない」
- 「誰も使っていないのに残っている」
を“分ける・減らす”ことから始める、ということです。
情報の5Sは、DXの「前段」を整える活動
DXは、ツール導入がゴールではなく「業務が回る仕組み」をつくること。
情報の5Sで「探さない」「迷わない」「間違えない」状態ができて初めて、AI活用・自動化・データ分析が“効く”ようになります。
今日からできる!「IT・デジタルの5S」実践テクニック
精神論ではなく、明日からオフィスで実践できる「情報の5S」の手順を紹介します。
ポイントは、見た目を整える前に「捨てる基準」を作り、誰でも同じ判断で運用できる状態にすることです。
パソコン整理完全ガイド!
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【整理(Seiri)】デジタル「赤札作戦」で捨てる基準を作る
5Sで最重要なのは「整頓」ではなく、まず「整理(捨てること)」です。
整理は「きれいに整える」ではなく、徹底的に処分するための判断基準づくりです。
- 「保留フォルダ」を作る:判断に迷うファイルは捨てずに「保留フォルダ」へ隔離します。
- 期限ルールを決める:「保留フォルダに入れてから1年間アクセスがなければ廃棄」のように、迷いを消すルールを置きます。
- 分類の基準を明文化する:「いる/いらない/急がない」をチームで揃えるだけで、後戻りが激減します。
👉 5Sの整理とは?目的・基準・進め方まで失敗しないコツを徹底解説
【整頓(Seiton)】データの「3定管理」でAIが読める状態にする
整頓は「必要なモノを、いつでも、だれでも、すぐに取り出せる状態」。そして整理が終わって“要るモノだけ”になってから進めるのが鉄則です。
デジタルでは、3定(定位置・定品・定量)を「フォルダ×命名×版管理」に落とし込むのが効きます。
- 命名規則を統一:「日付_案件名_担当者」など、誰が見ても意味が取れる形に揃えます。
- “不明ファイル置き場”を作る:正体不明を放置せず、専用フォルダで一時保管→月1で棚卸しします。
👉 5Sの整頓とは?意味・3定から進め方・事例・失敗対策まで徹底解説
【清掃(Seisou)】デスクトップは「1列以内」を死守する
PCのデスクトップは作業机と同じ。アイコンが散乱すると、判断コストが増えます。
そこで、運用ルールを視覚で守れる基準にします。
- 基準:デスクトップのアイコンは「左側1列(多くても2列)」まで。
- セットでやると効く:使わないショートカットは削除/ファイル・フォルダはルールで整理/不明ファイルは専用フォルダへ。
👉 5Sの清掃とは?意味・目的・効果・ルール化のポイントを徹底解説
5S活動を形骸化させない「組織と人」の育て方
「5s活動 it」「5s活動 dx」で検索される方の多くが悩むのが、「活動が定着しない」という問題です。
ここを突破する鍵は、ツールやルールの前に“運用する人と組織の設計”にあります。
1. トップダウンの号令だけでは失敗する
「DXをやれ」「フォルダを片付けろ」と上司が指示するだけのトップダウン型は、現場に「やらされ感」を生み、定着しにくい──これは5Sでも同じです。
理想は、現場の社員が「このフォルダ構成は使いにくい」「検索に時間がかかる」と自分で気づき、改善提案が出てくるボトムアップ型。
ボトムアップ型は、社員が問題を見つけ、解決策を考え、実行することで主体性・考える力・風土の活性化につながる、と整理されています。
👉 なぜボトムアップ式5Sが組織を変える?成功のポイントと継続の仕組みを解説
2. 人を責めずに「仕組み」を責める
データがぐちゃぐちゃになるのは、社員の性格のせいではありません。 「誰でも迷わず保存できるフォルダ構成」や「命名ルール」などの仕組み(システム)がないことが原因です。
トヨタ式の考え方として、「人を責めるな、仕組みを責めろ」が挙げられており、ミスを減らすには感情的に叱るのではなく、ミスが起きない仕組みを作ることが重要だとされています。
DXも同じで、「片付けられない社員」を叱るより、「片付けられない仕組み」という“バグ”を修正する発想が、導入後の定着率を一気に上げます。
3. 【躾】AI時代に必要な「違和感に気づく力」
5Sの最終段階である「躾(しつけ)」は、単にルールを守ることではなく、いつもと違う状態・違和感に気づける状態(気づく力)だと整理されています。
これが、IT・DX、そして生成AIの時代にはさらに重要になります。
たとえば、AIの出力を鵜呑みにせず、
「このデータ、なんかおかしいぞ?」
「この分類方法は非効率だ」
と気づける感性が、AIのエラー(ハルシネーション)を防ぎ、デジタルの品質を担保する──という視点です。
※この“気づく力”は、最初から高いレベルを求めるより、ハードルを下げて小さく習慣化する(例:30秒だけ整える)ことで育ちやすい、とされています。
👉 5Sの「躾」に違和感?誤解されがちな「躾」の本当の意味とは
4. 定着する職場は「対話の型」を持っている
5Sは、社員間のコミュニケーションを活性化し、相互理解を深める機会でもあります。
たとえば、リーダーが「意見ありますか?」ではなく「〇〇さんはどう思う?」と一人ずつ問いかけることで、当事者意識が生まれやすい──こうした“問いの型”が、改善提案の文化を支えます。
👉 意見を吸い上げる会議の進め方|ボトムアップで社員の主体性を育む方法
よくある質問(FAQ):情報の5SでDX・AI導入を成功させるために
Q. 「情報の5S」とは何ですか?通常の5Sと何が違うのですか?
サーバー・クラウド・PC内の“情報”を、探さず迷わず使える状態に整える5Sです。
対象が「モノ」から「データ・ルール・運用」に広がるのが違いです。
Q. DXやAI導入がうまくいかない原因は、なぜ「情報整理不足」に集約されるのですか?
A:入力データが散乱・重複・最新版不明だと、AIも人も判断ミスと手戻りが増えます。
ツールの前に“使える情報環境”がないと効果が出ません。
Q. IT・DXのための5Sは、どこ(共有サーバー/クラウド/個人PC)から始めるべきですか?
A:まずは「全員が触る共有領域(共通フォルダ・共有ドライブ)」からが最短です。
次に個人PCのデスクトップ/DLフォルダを“散らからないルール”で整えます。
Q. ファイル命名規則は、最低限どこまで決めれば十分ですか?
A:最低限は「日付(YYYYMMDD)+案件/テーマ+版(v1等)+担当」の型でOKです。
検索・並び替え・引き継ぎが一気に楽になり、AI/RPA連携も安定します。
Q. 最新版が分からなくなる問題を防ぐには、版管理(verルール)をどう決めればいいですか?
A:「最新版フォルダを1つに固定」「版はv01→v02で連番」「更新履歴は冒頭に1行」などで統一します。
“最新がどれか迷う”状態を仕組みで潰すのがコツです。
Q. 「人を責めずに仕組みを責める」とは、情報管理では具体的にどういうことですか?
A:「保存ミスする人が悪い」ではなく「迷わず保存できる場所・名前・手順がない」が原因と捉えます。
ルールと導線(テンプレ・保存先・命名例)を整えて、誰でも正しくできる設計にします。
まとめ:5SはDXの「一丁目一番地」
「5S活動」は決して古臭いアナログ手法ではありません。
IT化やDXを成功させるための最優先事項(=土台づくり)であり、ここを飛ばして成果を出すのは難しい──この記事の結論はここです。
AIやDXの導入でつまずく現場では、多くの場合、
- どこに何があるか分からない
- ファイル名がバラバラで検索できない
- 最新版が分からない/判断基準がない
といった「手前の詰まり」が起きています。
だからこそ、やるべき順番はシンプルです。
- 整理:捨てる基準を作る(デジタル赤札・期限ルール)
- 整頓:誰でも迷わない構造にする(命名規則・定位置化)
- 清掃:いつも綺麗に保ち、メンテナンスを行う
- 清潔・躾:仕組みとして回し、違和感に気づける文化にする
まずは足元のフォルダ1つ、デスクトップのアイコン1つからで構いません。
小さな「整理」が積み重なるほど、AI活用・自動化・分析の精度が上がり、現場が“使いこなす側”に回れるようになります。